■サラリーマンの引き出し

 「広報・CSRコンサルティングをはじめました」というと、非営利団体の方から、興味を持って、話しかけていただくことがあります。広報やCSRというものへの興味、企業の業務の進め方への興味、成功談や失敗談への興味、いろいろなものがあるように思いますが、その中でも一番大きいのは、「サラリーマンはどのように仕事をやっているのか?ノウハウを聞いてみたい」なのでは、と思うようになりました。

 「広報をやりたい」という話を伺っていると、実はその組織にとっては、すぐに広報活動に取り掛かるよりも、まず仕事の進め方や事業計画の整理、ミッションや方針の再認識が必要、というケースがあります。相談者も自らの組織の課題には気づかれているのですが、具体的な対応方法が分からない、対応する時間やリソースが無い、という実務のバリアがあるのです。

 

企業にも、当然同じ課題はありますが、そのバリアを超えるための手法やツール、また専門部隊が揃っています。例えば、新入社員や中堅社員への研修などを通して、会議やプレゼン能力の向上、仕事の優先度付けの考え方などを学ぶことができますし、それを実施する人事部隊もいます。また、各人がさまざまな部署に異動することにより、先輩や上司から違った考え方、業務の進め方を知ることができます。何年かに一度業務内容が代わったり、海外で働いたりするともっと大きなダイナミックスを得ることができます。

 

非営利団体は、企業とゴールは違いますが、仕事の段取りや進め方そのものに大きな違いはありません。であると、サラリーマンは多くの部署や業務を経験してきたなりに、実践の「引き出し」を多く持っているのではないか?と考えるようになりました。そして、この実際の失敗や成功経験は、非営利団体にも役立つのではないかと思うようになりました。 

もちろん、非営利団体には、行動の説明責任がより多く求められるなど、企業とは違った特性があり、全て同じわけではありません。ただ、経験知の良いところを学ぶことは有用なのではないか、と考えています。

サラリーマンの時には気づかなかった「サラリーマンとしての引き出し」にいっぱい詰まった失敗の経験や成功の喜びが、私の持つ一番のノウハウではないか、と考えています。それを「どうやって相談者の組織内で実践できるか」にコンサルティングの工夫があると感じています。