■広報担当者のためのCSRノウハウ①

私はソニーのさまざまな部署で、合計20年以上広報を担当し、その後CSR業務につきました。広報では、製品広報、企業広報、海外(米国)の広報、新会社の広報立ち上げなど、幅広い経験をしました。その後、CSRに異動してコミュニケーション業務を担当したのですが、正直最初は「CSR分野でも、メッセージを伝えるという基本部分は同じだろう」と思っていたのですが、実は考え方も手法も全く違っていて、それを理解することにとても苦労しました。最近は広報経験者が、CSRを行うことも増えたと聞き、私が当時つまづいた点を考えてみました。

1)何をポイントとするか: 今どき、全くCSR活動をやっていないという会社は少ないでしょう。環境負荷低減にしろ、社会貢献にしろ、多くの活動の中で何がポイントなのか、情報の絞込みがとても難しかったです。

2)有識者が少ない: 広報であれば、製品や新技術について、社内に識者がいます。製品が発売されれば、売上げの多寡でメディアに評価されます。CSR分野には、格付け調査や各種ランキングはありますが、基準が多岐に渡り、何が重要なのか判断が難しく、有識者も圧倒的に少ないです。

3)適切な活動の度合が分からない: CSR活動は、マルチステークホルダーを意識して行うとされます。社員、社会責任投資家、NGOなどがステークホルダーですが、それぞれ主張や関心事が非常に異なり、誰のためにどこまで活動をするのが良いのかが分かりません。

コミュニケーション技術というよりも、何を伝えるべきなのか、重要性の判断がつかない、ことが自分の中での課題でした。

明快なリリースを書き、簡潔に記者に正確な情報を出してきた広報担当者には、とても悩ましい状態です。

これをどうやって乗り越えたかは、また次回に書きますが、お伝えしたいのは、「広報担当者が、CSRの情報発信を行うときは、広報とは全く違う発想と手法で行うことを意識する」ことです。次回は、その違いについてお話します。