■広報担当者のためのCSRノウハウ②

前回、広報とCSRでは同じコミュニケーションでも全く違うとお伝えしました。広報は、重要な一つのニュースに絞りこみ、結論から述べていくコミュニケーションです。CSRは網羅的に大小さまざまなトピックの並列開示を行い、コミュニケーションは、活動の背景説明から始まって、結論に向うスタイルです。

2つの違いを理解して、使い分けができれば良いのですが、担当者としてはかなり発想の切り替えが難しいのです。

では、CSR情報を、いわゆるニュースにするために、プレスリリースでは何に注意すべきでしょうか?

CSRの通常のコミュニケーションスタイルでは、リリースにならないため、伝える重要ポイントの取捨選択が重要です。

 

まず、①そのCSR活動が必要となった社会的背景 ②企業が据えた長期目標の説明 ③CSR活動を行うビジネス上の意義 ④活動内容とその活動が社会に与えるインパクト を抽出します。

①と②は、国際的な基準やNGOが推奨する基準があり、どの基準に沿うかにその企業の姿勢が表れ、選択理由を明示できることが必要です。③は、その企業のビジネス戦略に組み込まれる内容で、具体的な提示が必要です。④で、その企業のCSR活動(環境、人権、ダイバーシティ、コンプライアンス等)の新規性や自社にとっての重要性を説明します。

抽出した4つのポイントを組み合わせて、いかにそのCSR活動がビジネスに繋がり、社会課題の解決に繋がるかを説明できれば、ニュース価値を伴ったリリースが完成すると思います。

上記4つがリリースに明示される会社は、まだ日本にはかなり少ないと感じますが、目指す姿として常に頭に置いておくことは重要と感じます。

なお海外では4つのポイントが入ったリリースはもっと多いですし、企業トップの発言においてもよくみられます。常日頃、企業はNGOや社会責任投資家などの厳しい要求にさらされ、適切な情報を発信しない場合に、リスクが大きいからかと思います。

日本ではNGOの影響度がまだ低いと捉えるか、日本のマスコミや市民の関心が低いと捉えるかは、さまざまですが、今後ますます海外投資家の影響が増大するといった市場の変化を考えると、今からできるだけ正確に4つのポイントを出していくべきでしょう。

広報出身者にとっては、自社の活動内容以外のこと(上記で挙げた①、②、③)をうまく説明することは、なかなか難しいですが、ぜひ挑むべきチャレンジと感じます。